自宅サロンとは

自宅サロンとは自宅の一部を利用して営業するサロンのことをいいます。自宅の一部のほか、賃貸マンションの一室を借りて開業することもあります。自宅サロンのほか、おうちサロン、プライベートサロンなどとも言われることがあります。路面店やテナントを契約したり、店を新築で建てたりするより初期コストが抑えられるため、ネイルやエステ、リラクゼーション、マツエクなどの分野で自宅サロンを選ぶという人も多くいます。

賃貸マンションで自宅サロンを開業する前に必ず確認すべきこと

賃貸マンションや賃貸アパートでサロンを開業しようと考えているなら、契約する前に仲介不動産会社を介するなどしてその物件のオーナー(大家さん)に開業してよいかどうかを確認することが必要です。なぜなら通常、賃貸マンションやアパートなどは住居用として貸し出されているケースがほとんど。貸主である大家さんに無許可でサロンを開業した場合、契約違反とされる場合があるからです。具体的に何が問題なのかを挙げていきます。

①賃貸借契約違反

一般的に賃貸借契約を結ぶ際、居住用か事業用のどちらかで契約をすることになります。借りたマンションやアパートでネイルサロンやエステサロンを開業する場合には、本来事業用として契約する必要があります。しかし、居住用として契約した賃貸マンションや賃貸アパートなどで自宅サロンを無断で開業した場合には、使用目的が異なるため契約違反となるのです。「週に1度だけの営業だから大丈夫」「完全プライベートサロンだから人の出入りも少ないし平気」というような勝手な判断もNGです。賃貸借契約書に定められた目的(つまり、事業用なのか、居住用なのか)を守らなければ契約違反となり、場合によっては解約、そして即時退去を求められるケースもあるので注意が必要です。
また、自分が所有する分譲マンションであれば開業できるかというと、必ずしもそうではありません。マンションなどの集合住宅の場合、管理組合の規約があります。その管理規約により営利目的の事業を制限されている場合があるので、自宅サロンとして営業ができるのかどうか確認をとらなければなりません。しかし、そのサロンが営利目的でなく、対価をもらわずに施術やサービスを無償でおこなう場合や、1度限りの施術など継続性がない場合には事業とはみなされず、賃貸契約上の問題が発生しない可能性があります。

消防法がクリアできる物件か

自宅サロンを開業するため賃貸マンションや賃貸アパートなどの建物や建物の一部をこれから使用しようとする場合、管轄の消防署に「防火対象物使用開始の届出」をしなければなりません。消防署は建物の安全性を確保するために、防火対象物であるそのサロンの使用状況を把握し、届出内容の確認や消防用設備の設置状況などを事前に審査・指導する義務があるからです。これは、リノベーションなどの工事を行わない場合にも必要な届出です。一般的に、不特定多数の人が利用する店舗などは住居用建物よりも厳しい防火・避難規定が定められています。もし建物が住居用のマンションやアパートだった場合には、不特定多数の出入りを想定していないため、お店としての消防法上の設備を満たしていない場合もあります。物件を決めてから困ることのないように、あらかじめ確認することが必要です。届出はオープンの後ではいけません。使用開始、つまりサロンをオープンする7日前までに提出する必要があります。

建築基準法上の問題

賃貸マンションやアパートで自宅サロンを開業する場合、建築基準法上の問題が発生するケースもあります。建築基準は建物が居住用かそうでないかなどの使用用途に応じて変わります。美容室やマツエクサロンなどであれば、保健所が定めている面積や設備の設置が求められます。建物や内装設備が自分が開業したいサロンでの建築基準を満たしているか、確認することが必要です。

自宅サロンを開業する賃貸マンションの選び方

では、どんな賃貸マンションだったら自宅サロンを開業することができるのでしょうか。これまで挙げた問題点を全てクリアし、自宅サロンを開業できるのは、SOHOタイプと呼ばれる賃貸マンションです。「SOHO」とは”Small Office Home Office” を略した言葉で、小規模な事務所や自宅の一部を仕事場とする働き方やその仕事場、物件のことをいいます。そして、SOHOタイプの賃貸マンションとは、内装設備は住居用で、かつ店舗契約や事務所契約も可能な賃貸物件をさしています。
試しにインターネットで「SOHO 賃貸 (エリア名)」と検索してみればたくさんの物件情報を見ることができます。SOHOタイプの賃貸マンションは商業エリアにある物件も多く、事務所やお店としての使用を想定したおしゃれな内装に仕上げられているタイプもあります。自分の気に入ったデザインや設備の部屋と巡り会うことができれば内装工事をすることなく自宅サロンを開業することができます。ただし、事務所としての使用が可能なSOHOタイプの賃貸マンションでも店舗としてはNGな場合もあるので注意しましょう。

自宅サロンを開業したら個人事業主としての開業届を提出

賃貸マンションやアパートで自宅サロンを開業する場合にも、管轄の税務書に開業届を提出します。特に罰則規定などはありませんが開業から1ヶ月以内に納税地の税務署に提出することがルールとなっています。またあわせて、確定申告時に最大で65万円の特別控除を受けることができる青色申告をしたい場合には、青色申告承認申請手続きも忘れずに行いましょう。原則、申告をしようとする年の3月15日までに手続きが必要です。開業届けや青色申告承認申請書の作成をサポートするソフトやアプリなどもありますので、活用するとスムーズです。

隠れ営業は集客できないというリスクも

「だまっていればわからない」と大家さんに内緒で本来は居住用の賃貸マンションや賃貸アパートで隠れて営業を開始したらどうなるのでしょうか。賃貸借契約や消防法、建築基準などに対するリスクのほか、隠れ営業には集客上のデメリットもあります。人目を気にして店の看板を出すこともできず、HPやSNS、チラシなどでの積極的な集客も難しくなるからです。集客ができなければ結果的に店の売上を伸ばすことができず、行き詰まることにもなるでしょう。また、たとえ一定のお客様がつかめたとしても人の出入りが不自然に増えることで同じマンションの住人に不審がられてしまったり、お客様が駐車場の位置を間違えたり路上駐車をしたりしてトラブルになってしまうなど、サロンのことが公になるきっかけは日常的に潜んでいます。結果、予想以上に大問題に発展しうる可能性もあるのです。サロンを軌道にのせるためにも、気持ちよく自分のサロンを続けていくためにも、堂々と集客でき、運営できる環境で開業することをおすすめします。