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ケース① 出店する場所を間違えた

資金に余裕がないため少しでも固定費を安くしようと、家賃の安い裏路地の雑居ビルの5階に出店。しかし人通りが少ない上に店に気づいてもらえず、多額の広告宣伝費をかけることに。結果、赤字になってしまった。
どこに店を構えるかは、整骨院を開業するうえで最も重要な事柄の1つです。もちろん、開業当初から資金に余裕がある人は少ないとは思いますが、だからといって安さだけで出店場所を選ぶのは危険です。特に整骨院の場合、雑居ビルなどの2階以上である、いわゆる空中階の場所は路面店に比べて気づかれにくくあまりおすすめとは言えません。かえって集客のための広告宣伝費が無駄に高くついてしまう可能性があります。駅近はもちろん、バス停の近くや人通りの多い道路、スーパーなど人があつまる施設の近くなど、なるべく店の入口や看板が人の目につきやすい場所がおすすめです。場所を決める前に、あらかじめ通行者の動きや目線も自分の目で確認できると安心でしょう。また、体に触れる施術をする整骨院は、安心感や清潔感は絶対条件。騒音や害虫が心配されるような不衛生なビルや、夜の歓楽街など治安の面で心配があるような場所は避けた方が良いでしょう。とはいえ、立地条件がよければ家賃も高くなりがちです。無理なく営業が続けられる家賃かどうか、慎重に判断することが大切です。
ケース② 競合店が多すぎた
駅近で人通りの多い好立地な場所で開業したが、思ったほど客足が伸びない。ある日周辺を散策してみたら、徒歩圏内に施術内容やコンセプトが似ている競合店がたくさんあった。
駅近や主要道路沿いは整骨院にとって好立地といえますが、その分競合も多い確率が高いでしょう。同じようなコンセプト、同じようなメニュー、同じような価格帯であれば、固定客を掴むことは難しくなります。もし整骨院が多い場所に出店するのであれば、お客様の来店の動機になるような、他のお店にはない特徴や、「またここに来たい」と思ってもらえるようなサービスなどが欠かせません。逆に、これだけは他店に負けない、これは自分の店だけにしかないサービスなど、差別化できるだけの特徴がある整骨院にすることができれば、たくさんの整骨院の中から選ばれる店になるはずです。
ケース③ 客層にあわなかった
施術内容も店の雰囲気も、昔から自分の思い描いていた通りの整骨院をやっと開業した。最初は集客ができていたが、リピーターを増やすことができなかった。
開業にあたってその整骨院に自分の夢や理想を詰め込みたい気持ちが先立ってしまうと、客のニーズにあった店づくりができず、失敗に陥りやすくなります。開業しようとする場所(商圏)ではどんな客層が多いのか、年代や性別、家族構成、職業など、マーケットをきちんと分析した上での店づくりが大切です。
たとえばオフィス街での開業であれば会社員などをメインターゲットにしたメニューが求められるでしょうし、ファミリーの多い住宅街であれば子育て中の女性をターゲットにしたほうが良いかもしれません。また、シニア世代の多いエリアであればその世代の体の悩みに即したメニューにニーズがあるでしょう。施術にかける時間も、店の雰囲気も、価格帯も、すべて想定する顧客によって変わります。独りよがりの店づくりでは成功はできません。想定する顧客をイメージしてペルソナを作成してみたり、自分の整骨院が選ばれるプロセスや決定までのストーリーを「見える化」するカスタマージャーニーを作ってみたり、どんな人に向けたサービスなのかを自分で明確にし、それに沿った施術内容やサービス、店の雰囲気にすることが重要です。
すでに開業をしている人であれば、来店した顧客の分析をしてみましょう。リピート率や離反率、人気、不人気なメニュー、その理由などを調べていくうちに、自ずと顧客のニーズも見えてくるはずです。

ケース④ 腕はあっても接客・サービスがよくない
柔道整復師としての腕には以前から定評があったし、自分でも自信がある。でも客足が伸びず、リピート率も芳しくない。
柔道整復師の国家資格があれば、整骨院を開業することは可能です。しかし、高い技術を持つすべての柔道整復師が自分で整骨院を開いて成功するとは限りません。最初に挙げたように、近年では整骨院の開業数が伸びています。つまり、ライバルが増えているということです。技術がどんなに高くても、接客がぞんざいであったり、店の掃除が行き届いておらず不衛生であったりと基本的なサービスが疎かになっている整骨院であれば、また行きたいとは思えません。せっかく技術に定評があるのであればそれではもったいありません。サービス面や衛生面もあわせて強化すれば、成功する確率はぐんとあがるでしょう。清潔さはもちろん、客層にあわせてインテリアを変えてみるのも1つの方法です。また、顧客の症状は一人一人で異なります。カルテをつくり、症状にあわせた治療プランをつくるなど、ニーズにあわせた個々の対応を目指すようにします。手間はかかりますが、どんな人にも一律同じ対応をしていた頃と比べれば、リピート率は格段に上がるでしょう。

ケース⑤ 宣伝不足で店の存在を知られていない
失敗とまでは言わないが、開業当初よりだんだん売り上げが下がってきてどうしたら良いかわからない。
開業後、ただ手をこまねいて待っているだけでは顧客は増えません。やはり一定の広告宣伝は必要です。たとえば、開業時にHPやチラシを作るだけ作って満足してしまっている場合もあります。特にHPは作っただけではチラシを配布せず手元に置いたままにしている状態と同じです。ターゲットとなる顧客に見てもらうために、そのページに誘導する広告的な戦略が必要です。リスティングといわれる広告や自然検索で上位に表示させるSEO対策などです。また、チラシも1度まいただけで継続的な効果が出るということは稀でしょう。顧客リストを確認し、再来院を促すDMを送るなど継続的なアクションも大切です。そこまで宣伝に費用がかけられないという場合にも、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSをこまめに更新することで集客につながることもあります。

まとめ
今回は、整骨院を開業するうえでの店づくり編として「立地」「競合店の有無」「顧客のターゲット設定」「サービス」「宣伝広告」に関する失敗例と失敗しないためのヒントを解説してきました。特に場所選びや顧客ターゲットについてはしっかりとした分析が必要です。良い物件が見つかったからと飛び付かずに冷静な視点で見極められるように、出店したい商圏の客層をあらかじめじっくり調べておくなど、事前準備を怠らないことが大切です。
