整骨院、接骨院の現状

施術所の数は頭打ちになり、倒産が増加

整骨院、接骨院の数は2010年から10年の間に約1万2,400箇所増え、2018年末時点で約5万7,000箇所。2018年までは2年ごとに2,000から4,000箇所程度増えていたのですが、2000年では約280程度しか増えず、伸び率が鈍化したのが最近の特徴と言えます。
整骨院、接骨院等が多いのはやはり大都市圏です。2020年の都道府県別柔道整復施術所(接骨院・整骨院)数で最も多かったのが大阪府で6,982軒でした。次いで東京都 6,161軒、3番目は埼玉県の2,993軒でした。
また、就業者数では、あん摩マッサージ指圧師(あマ指師)は2020年末時点で約11万8,000人で、2年前より800人ほど減少、一方で、はり師、きゅう師の就業者数はともに2018年より5,000人ほど、柔道整復師は2,700人ほど増加しています。柔道整復師はこの10年間で2万5,000人ほど増え、全体の就業者数は7万5,000人ほどいる状況です。
柔道整復師や整骨院・接骨院などの施術所が増えた背景には、養成学校の規制緩和があります。しかし、さまざまな原因により競争に負けてしまった施術所は倒産に至り、2020年は過去最多に迫るほどの倒産件数になりました。

整骨院や接骨院が倒産してしまう原因とは?

競合が増えたことによる淘汰

整骨院や接骨院などの施術所が倒産してしまう最も大きな要因は、数が増えたことによる競争の激化です。施術所の件数は2008年から2018年までにおよそ30%も増えています。さらに、整骨院、接骨院のほかに、鍼灸院やリラクゼーションサロン、マッサージサロンなども増加し、客側の選択肢が増えました。自分の店の特徴をうまく生かしながらうまく経営していくことができなければ、他店にあっという間に客が流れ、倒産へと追い込まれていってしまうのです。

療養費の縮小によって保険収入が減少

柔道整復師業界では、過去に来院履歴のある患者を実際には来ていないのに来院したことにする架空請求や、患者の来院回数を意図的に増やして請求する水増し請求などの不正が問題視されています。不正請求が摘発されることによって柔道整復師の保険収入である療養費が縮小され、その影響から潰れてしまう整骨院・接骨院もあります。また、この不正請求問題や業界の景気悪化の影響から、銀行や日本政策金融公庫などの融資機関での追加融資が厳しくなり、資金調達できない整骨院・接骨院は潰れてしまうということもあるようです。

コロナ禍での患者数減少

整骨院や接骨院は人と人とが接するサービスです。そのためコロナによる影響があったということは否めません。増え続けていた整骨院や接骨院は、コロナ禍による患者さんの減少によって淘汰がはじまったという見方もあります。また、経営が立ち行かなくなった柔道整復師が自分の店を廃業し、大手の整骨院や接骨院に勤め始めるという傾向もあるようです。

施術管理者の要件改定

2018年に、柔道整復療養費の受領委任の取扱をおこなう施術管理者の要件が改定されました。以前は資格免許を取得後すぐに開業できていましたが、この改定によって施術管理者になるためには実務経験が必要になりました。そのため、独立前にまずは整骨院や接骨院に会社員として勤務する人が増えました。そのような状況のなかコロナ禍に入り、独立開業をして苦労をするよりも社会保険などが完備される安定した勤め先でそのまま雇用されることを選択する柔道整復師が増えてきたということもあるようです。結果、複数の店舗を持つ大手の整骨院や接骨院にはスタッフが集まり安定的な経営ができ、一方で労働環境の充実をはかりにくい個人規模の整骨院や接骨院は従業員をなかなか集められず、淘汰されていくという状況もみられます。

整骨院や接骨院が潰れないようにするためのポイント

飽和状態にある整骨院・接骨院でも、高い売り上げをあげている施術所はあります。潰れてしまう施術所と何が違うのか、整骨院・接骨院が潰れないようにするためにはどのような考え方や対策が求められるのか、解説します。

経営視点を養い、現状を把握する

整骨院や接骨院を経営している人は柔道整復師であるパターンが多いと思います。技術職であり、施術についての勉強やスキルアップへの努力は怠りません。しかし、経営についての勉強をあまりしないまま独立開業をしたという人も多いのではないでしょうか。月の売り上げや利益、単価などは、経営する上で最低限把握し、分析していかなければなりません。数字やデータに弱い場合もあるかもしれませんが、わからないまま経営を続けているのは、運転免許を持たぬまま車を操作しているようなもの。ひとたび経営上のつまづきがあれば、あっという間に倒産・廃業に繋がってしまいます。さまざまな数字を洗いだし、データ化していくことは、健全な経営を続けていく上での大前提となります。

自分の整骨院、接骨院の強みを打ち出す

整骨院、接骨院が街にいくつも溢れている状況で患者さんを獲得するためには、選ばれるだけの理由が必要です。他の整骨院や接骨院で扱っていないメニューなのか、価格なのか、サービスなのか。差別化をはかれる強みを持つことがとても大切です。

ターゲットにそった販促をする

自分の整骨院、接骨院ならではのとても良い強みを持っていたとしても、ターゲットである患者さんに伝わらなければ意味がありません。特に、新規の患者さんの獲得は売り上げを上げるうえでとても重要です。チラシやホームページ、SNSなどを使って継続的に情報発信をするようにしましょう。今はインターネットによる販促が主流ですが、シニア層には届かない場合もあります。そんなときに意外と効果的なのは地域の清掃や学校行事の手伝い、地域行事への参加などの地域貢献活動です。地域の顔馴染みになることで安心感が増し、新規の患者さんが増えることに繋がることも多いでしょう。
また、経営に苦しむ整骨院、接骨院ではリピート率が低いケースが多くあります。この場合、リピート率を数値管理することから始めます。目標を設定し、DMをタイミングを図って送付するなどの対策をとります。

保険施術・客単価を検証する

保険適応の患者さんの割合が多い場合、一人当たりの単価が低くなる傾向にあります。それでも1日にたくさんの患者さんをこなせる整骨院や接骨院であれば良いのですが、1人で経営している場合など1日の対応患者数に限度がある場合、経営が破綻してしまいかねません。患者単価を少しでもあげていくために、保険施術だけに頼るのではなく、自費メニュー、サポーターやサプリなどの物販も取り入れていくことを検討しましょう。中・長期的には療養費が減少していくことも想定されます。そうなってから慌てないように、自費比率を高めていくことで経営基盤を強化していくことが重要です。

まとめ

整骨院や接骨院が潰れる背景には、それ以前に急激に施術所が増えたことによる自然的な淘汰があります。淘汰のなかで生き残ることができれば、適正な施術所数のなかで一層の向上が見込めるでしょう。経営者としての数字管理を怠らず、自分の整骨院や接骨院の魅力を改めて見つめ直し、生き残れる工夫をしていきましょう。